植原研究室では,主に電力用機器・装置や電子デバイス・電子機器等の絶縁部を想定した電気絶縁工学に関連する基礎的研究を実施している。
(1) 複合絶縁体の境界面におけるトリーイング劣化
電力ケーブルの絶縁には,現在プラスチック材料が使用されている。電力ケーブルの中間接続部や終端部には必ず複合絶縁体の境界面が存在し,電気的に弱点となっている。この電気的弱点に局部的な高電界(電圧がかかっている空間の状態)が形成されると木の根っこのような樹枝状の劣化が進展する。このような現象を「トリーイング劣化」と呼び,形成された樹枝状の破壊路を「電気トリー」と呼んでいる。図1のように母材となる絶縁材料中にフィラー(充填物)を添加した場合の電気トリー進展の変化を実験とシミュレーションによって検討している。
(a) 実験 | (b) シミュレーション |
図1 複合絶縁体の境界面におけるトリーイング劣化の実験およびシミュレーション
(2) 水トリー劣化現象
水分と高電界の共存によってプラスチック材料中に発生する水トリー劣化現象は,これまで交流課電での研究が多くおこなわれてきた(図2(a)参照)。一方,地球温暖化防止,メンテナンス性向上,高効率化を目指し,近年インバータ波で運転される電気機器が増加している。このため,インバータ波が水トリー発生・進展にどのような影響をおよぼすかを明確にしておく必要がある。しかしながら,インバータ波印加時の水トリー発生・進展特性については調査例がほとんどない。そこで,本研究室では将来的なインバータ波印加時の水トリー発生・進展特性を調査している。図2(b)の試験装置を用いて民間企業との共同研究をおこなっている。
(a) 水トリー劣化現象 | (b) 試験装置 |
図2 水トリー劣化現象および試験装置
(3) 500MHz~13GHz帯における複素比誘電率の測定
現代社会では,携帯電話,無線LAN,レーダー等,電気絶縁材料のUHF帯及びマイクロ波帯での使用が増大してきている。電気絶縁材料の持つ誘電率は,信号の伝搬速度と密接な関係があり,材料の電磁波吸収によって損失が生じる。そこで,図3のSパラメータネットワークアナライザを使用して複素比誘電率を測定することにより,高周波損失の少ない(誘電正接(tanδ)の小さい)材料の開発に役立てたいと考えている。
図3 Sパラメータネットワークアナライザ
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